青木(アオキ) 大好評で長らく在庫切れだった「手品みたいなバッグ」HANDLEが、ついに在庫復活いたしました。
治田(ハルタ) 予約していただいた方、長らくお待たせしてすみませんでした。
角田(ツノダ) 無事に届いた方、ご感想ありましたらお気軽に連絡ください。
角田 というわけで、今日はね、治田さんにすごい聞きたいことがあって。
治田 ないでしょ。
角田 いや、いっぱいあるんです。治田さんに聞きたいことが。
治田 なんでしたっけ
角田 僕はね、HANDLEについて、ずっと謎に思っていることがあるんです。HANDLEって機構がすごいじゃないですか。
青木 トートとリュックとが一瞬で切り替わる、あの仕組みですよね。
角田 そうそう。でね。あれを、いつ、どうやって思いついたのかってことですよ。
僕と青木さんとかは、だいたい作りながらいちいち周りの人に聞いて回りながらものを作っていく方じゃないですか。
青木 はい。2人とも「見せたがりさん」ですよね。
角田 でもHANDLEって、治田さんから前置き無しにいきなり、すごい試作が出てきた。
治田 はははは!そうでしたかね、はい。裏では試行錯誤してるんですけどね。
角田 そのプロセスを知らないから、どういう経緯でそこに至ったかが全く想像できないんですよ。「なんか急にすごいの出てきた!」としか思えてなくて。
治田 ははは、ではお話しますか。
角田 ぜひお願いします!
青木 これまでの経緯を始めから読みたい方はこちらの目次からどうぞ。
これまでのお話 もくじ
1.ひらめきのタイミング
2.バッグの中身を見てみよう
3.思考の流れを遮らない、最もミニマルなバッグ
4.言わない治田さん
4.言わない治田さん
治田 もともとは、角田さんと青木さんが「HINGEが入るトートバックとか欲しいよね」って雑談してて。たしかその時2人は「ありもののトートバッグにidontknow.tokyoロゴ印刷したら十分じゃない?」とか話してましたよね
角田 あ、なんかいやらしい話をしてましたね。確かに。
治田 2人はノベルティに使われるようなトートバッグとか探してて。その傍らで僕は、オリジナルのバッグを作りたいなあって思ってたのと、実はずいぶん以前から2WAYバッグを作りたいなあと思ってたんですよ。
角田 ふむふむ。長いこと考えてたんですね。
治田 実は長年のテーマでした。それで2人の話を聞いているときに突然「折り紙みたいな思考で変形すれば、理想に近いバッグが作れるかも!」ってひらめいた。
角田 その時、僕と青木さんがロゴ入れトートバッグについて議論してる横で、実はこっそり試作もしてたんですよね。
治田 はい、手元で小さなモックを作ってました。折り方を色々工夫してたら「あ!すごいのできたかも!」って思って。
角田 できたかも!って思って、、、
治田 そっとしまいました。
角田 なんで!!!
治田 なんでだろうね?
角田 いや別にね、それは性格の話なんで「思いついたらすぐ見せてよ!」って無理強いしたいわけじゃないんだけど。例えば僕だったら、もう思いついた瞬間に言ってしまうわけですよ。
青木 僕もそこはもう、我慢できなくて言っちゃいますね。 でも僕はその時、治田さんが手元でなんか作ってて、どうやら何かに到達したようだぞ?ってことには気づいてたんですよね。
角田 そうなの!?なんでその時に「何作ったの?」って聞かないの?
青木 いや、そこは治田さんと僕は付き合いが長いので。聞かない方がいいのかなと気を使って。
治田 気を使わせてすみません。
青木 じゃあまずは、最初の小さな試作を見せてください。
角田 いまようやくあの時の謎が公開される!
治田 そして家に帰ってミシンで手作りした試作がコレですね。
治田 この時は、袋自体を菱形状に変形させることで、トートからリュックへ行き来できる構造を採用していました。
角田 治田さんのすごいところは、前振りなしに、バッチリなアウトプットがいきなり出てくるわけ。この時も、すごいなあと思って。
青木 もうこれ見た瞬間、僕と角田さんは「これはすごいものが出たぞ!!もう、すぐに商品化しましょう!!」って。
角田 そう、すぐに出そう!って言って。知り合いになりたてだったALLYOURSさんに協力してもらって、量産に向けた試作もたくさん作りましたよね。
青木 でもなぜか治田さんだけがずっと納得しない。
治田 この菱形構造って実は致命的な欠点があったんです。リュックからトートに変形させるときに、カバンの中身を全部出さなきゃいけないっていう。
角田 僕と青木さんは「それでもいいから早く商品化!」って言ってましたね。
治田 そうなんですけど、何かこう、自分が納得できなかったんですよね。それでそのあともずーっと、毎日の通勤電車でずーっと考えてて。
治田 もう、頭が本当に、相当痛くなるくらい考えてました。近年稀にみるほど辛かったですね。
角田 そのね、悩んでる感じが、全然伝わってこなかったから。「治田さん、なんでまだあれを商品化しないの!?」って僕たちはヤキモキしてね。
治田 それである日に、全然違う構造を思いつきまして。
角田 出た、紙のモックアップ。 これも初めて見るやつだ。
青木 これが最終形に近い構造ですね。
治田 この段階で、袋を変形させるのではなく帯を移動させる案に至りました。
角田 それで、ある日の打ち合わせに向かってる道すがら、またいきなり治田さんから最新の試作を手渡されまして。
リュックの状態で渡されたもんだから、持ち手を持った瞬間に「シュパッ」ってトートに変形して。
角田 僕はあのとき純粋に驚いたからね「あれ!?リュックどこいったん?」って。
青木 「手品だ!なにこれ!手品みたい!!」って叫んでましたもんね。
角田 一度は完成に近いものを出していて。周りの仲間もみんな良いって言っている。量産に向けて検討も進んでいる。
それなのに、そこからゼロベースで考え直す。このちゃぶ台返しを一人でできてしまうのが、治田さんのすごいところだよね。
治田 僕ももうちょっと若い頃だったらできなかったんです。
本質的にはどうなんだろう?ってところまで立ち戻ってゼロから考え直せた、このHANDLEのプロセスは、僕自身すごいよかったと思ってます。結果として。
治田 それで完成したかのように思えるんですが、じつはこの時は、持ち手の形状が最終と違うんですよね。
角田 普通のトートバッグの持ち手っぽい処理だね。でもこれだとバックパックにしたときの変形が、ちょっと気持ちよくなかったんだよね。
青木 そうそう。シュパン!じゃなくて、グググ、、って止まる感じになっちゃってて。
角田 「治田さん、ここ、シュパン!ってなるようにできないの?」ってお願いしました。
治田 なかなかキツイ要求でしたね。
青木 さらにここからまだ紆余曲折ありましたよね。
治田 そうですね。そもそも、僕たちは樹脂や金属、木材やガラスなどの経験はあるけど、生地モノはそれほど経験がなかったというのがあります。
青木 普段はゼロベースからすべてのパーツを新規で作ってしまってるんですけど、カバンの業界は、世の中に存在する膨大な素材の中から、生地はもちろんベルトや金具などを1つ1つ選定しないといけない。
角田 「セレクトして組み合わせて作り上げる」っていうのは、本当に独特だと、見てて思いましたよ。
青木 ロゴの位置も最後まで揉めましたよねえ
治田 最初はタグをつけようとしてて。次に袋の部分に印刷しようとしていて。
角田 ボディ部分だと、市販のエコバッグにプリントしたやつみたいに見えてしまうのが嫌だなあとか言ったり
青木 HINGEのヒンジ部分にロゴを入れたように、HANDLEにとって一番の特徴になる部分にロゴを入れたいよねと話し合って、現在の位置になりました。
治田 いやあ、思いつきからここまで、本当に長かったですね。永遠に終わらないかと思えた試作の日々でした。
青木 でも結果的にこんなに革命的なのに、極限までシンプルなものが生まれて!諦めずにいろいろ検討してみるものですね。
治田 どうですか、使い心地は。
角田 すごく調子良いよ。MacBookとHINGEとその他色々なものを入れて、しょっちゅう使ってる。マチがないから薄いものしか入らないのかと思いきや、意外と上着なんかドカドカ入るしね。
青木 帆布のガッシリした感じも頼もしくて良いですよね。使うごとに馴染んでくる感じもするし。
角田 そんなわけで今回は、これまでベールに包まれていた治田さんの秘密が、わずかに明らかになったということで。
治田 ははははは
青木 年内にはまた、何らか新製品も発表したいと思います。
角田 次回をお楽しみに!