(前回からの続きです)
治田 むむう、なるほどー。それから11年後の2016年夏に、転機が訪れたわけですね。
角田 そうそう。あれは2016年の夏頃。アイドントノウ結成前で、一緒にオリジナルのラムネを開発してた頃ね。
青木 懐かしい、、、毎週末やってましたね、オリジナルラムネの開発。
角田 まだ商品化は諦めてないけどね!それで、ラムネは「考えるためのお菓子」として開発してたわけだけど、同じように「考えるため」を起点にいろんなアイテムを開発できないかなと話してて
治田 そうですね。そのディスカッションの中から「考える道具」HINGEも生まれました。
角田 「”考える"といえば、僕は昔、ボードゲーム作ってたんだけど、試作見てみる?」って言って。
青木 ですね。そのときに出て来たのが、このアリさんの試作でした。
治田 それで11年ぶりに遊んでみたわけですね。どうでした?
角田 青木さんが「面白い!けど、ルールがわかりにくい気がする」って。
青木 ものすごく面白いんだけど、もっとシンプルにならないかなあと思ったんです。それで「アリさんはいったん忘れて、単純にブロックの面と面が接していたら”繋がっている"というルールにして、一回プレイしてみませんか?」って提案したんです。
角田 そう。それで「そうかなあ?」とは思いつつ、一回プレイしてみた。半信半疑でやってみたら「あれ?ひょっとして面白い?」「うわ!めっちゃ面白くなった!」ってその場で大盛り上がりに。
青木 その場でどんどん遊びながらルールができていきましたよね。
「地上から地上を繋ぐようにしようか」とか「駒がなくなったら置いてある駒を抜いて別の場所に置いていこうか」とか。
角田 思いついたらすぐにプレイしてみて、面白いルールは採用していくというやり方だね。 やっぱり1人で考えてた時よりも、2人で対戦しながら試すことで、精度とスピードが格段に上がった気がする。
青木 この時点であまりにも面白いんで、僕は角田さんに頼み込んでアリさんの試作を貸してもらって。実家に帰ったときに小学生の甥っ子たちと試しにプレイしてみたんです。
青木 そうしたら甥っ子たちがハマりにハマって。姉家族と全員総当たり戦で、2日連続ずーっとCUBOID(キューボイド)大会してました。
角田 このときの写真が僕にもメールで送られて来たんだけど、ホンマにすごいハマってたよね。その日までこの世に存在してなかったゲームなのに、小学生でもハマるっていうのはめっちゃ嬉しかった。
青木 甥っ子たちからは「持って帰らないでよ」と言われるくらいで。本当に嬉しいリアクションでしたよ。
角田 一方そのころ、僕はこんな試作を進めてました。
角田 「こちら側とあちら側」「地上から地上へ」「面と面をつなげて道をつくる」というルールがより分かりやすくなるようにできないかなあと思って、フチに棒を足したり試行錯誤してました。
青木 もう一方では僕も、アリさんの試作は角田さんに返却しなきゃいけないので、事務所に戻るなり自分用に試作をつくりはじめました。
治田 本当にすぐに作ってましたよね。
角田 この時点でコマが白と黒に、盤がグレーになったんだね。
青木 実はこの配色も、こうしたいと思ってたわけではなくて。事務所にたまたま白と黒の絵の具だけがあったから、それで塗っただけなんです。
治田 盤面も格子の印刷じゃなくてドットになってますね。これは?
青木 格子を描くの面倒臭いなあと思って。ドットなら、キリで穴をあけるだけだから作るの楽だなあと思ってこうしました。
角田 たまたまやったんかい!
治田 一段低いところでプレイするんですね。
角田 アリさんは地下にトンネルを掘るから、そのイメージから来てたのかもね。
青木 額縁がある場所でプレイする事を前提に考えてましたね。でも額縁が邪魔でプレイしづらい時があって「ちょっとひっくり返してプレイしてみません?」って試してみた。
治田 ドットをキリで穴あけた試作だったから、ひっくり返してもプレイできたんですね。
青木 そこも、たまたまだったんですよね。それでプレイしてみたら
角田 「えー、こんなん、フチがどこなのかわかりにくくなるやんか。」「あ、盤の一番フチまで使ってみればいいのか」「そっかやってみよか」ってなって。
その結果、、、
青木 「なにこれ!面白さの深みが増してる!」って。
角田 このCUBOID(キューボイド)に関しては、本当に全部の工程が同じだったんだけど、思いついた事を疑わずに、とりあえず試しにプレイしてみるというのが、本当に効果的だった。
青木 「面白いかどうか」っていうのは、考えるよりも体験してみないとわからないってことですよね。
角田 ここから苦労したのがルールブック。 老若男女だれでもできるシンプルなルールが出来ただけに、一発で誰にでも理解できる説明書を用意したかったから、ここは絶対に妥協したくなかった。
治田 説明書をリファインするたびに試遊イベントも開催したりして。改善に改善を重ねましたね。
青木 ここでもそれまでの工程と同じく、考えるよりも試すことを重視してました。
角田 図の描き方1つ、テキストの言い回し1つで理解度が変わるから、ここは本当に時間がかかった。
青木 楽しくイベントをしてただけとも言えるんですけど、今思えば、スピーディーなプロトタイピングとユーザーテストの繰り返しでもありましたね。
角田 ああいうことを素早く気軽に、何度でもできるっていうのが、僕たちみたいな小さな活動の大きなメリットなのかもしれない。
青木 あともう1つ思ったんですけど、CUBOID(キューボイド)って、いわゆるボードゲームの戦略とか攻略の面白さだけじゃない、なんとも言えない気持ち良さがある気がしてて。
角田 あー、わかる。道が繋がったときの気持ち良さって、勝利の気持ち良さだけじゃないよね。仕事とかでアイデアが出る時の「ひらめき」の気持ち良さに近い感じ。
治田 たしかに。あと、プレイ中に考えている時に、直方体のコマをただ手で弄んでる感じとかも、なんだか気持ちよいですよね。
青木 そういう「なんだか気持ちよい感じ」って、今回の「頭ではなく手で考える」「とにかくプレイしてみる」っていうプロセスだからこそ生まれたのかなと思って。
角田 たしかにそうかもしれない。ゲームとしての面白さは追求しつつ、実は言語化しにくい気持ち良さを最優先して作ってたのかもしれない。
青木 その辺も、会議や企画書がない、小さな活動だったからこそ作れるものだったんじゃないかと思います。
角田 なるほどね。
青木 そんなこんなで完成したCUBOID(キューボイド)ですが、発売後の調子はどうでしょう
角田 老若男女、沢山の方々にお買い上げいただけていて、2018年春の段階で、およそ3000名以上のプレイヤーは存在する状態です。が、僕たちは世界に通用するゲームだと思っているので、まだまだですね。
治田 毎年夏には世界大会を開催していくんですよね。
角田 そうそう。夏の世界大会を恒例のイベントにしていって本当に世界中から参加者が集まるものにしていきたい。
青木 それ以外にも、小さなイベントも開催していきましょう!地方大会とか、ちょっとしたプレイヤー交流イベントとか。
角田 小さなイベントもいいよね。ぜひプレイヤーみんなで盛り上げていきたい。
治田 興味のある方は僕たちのFacebookページをチェックしてみてください。
角田 今後は様々な地域でイベント開催予定なので、お楽しみに〜