6.どんなモノも人が作っている
2017年5月のある日、HINGEを購入してくれたある方が、Twitterにこんなことを書いてくれました。
ピャー!!欲しかったものがきたー!!
これね、ただのファイルじゃないの。バラバラの紙を、スケッチブックみたいに使えるようになる優れものなの。
ノートより手軽に持ち運んで描けるの素晴らしい。これの製作秘話?も面白くて好き。https://t.co/k1SsdtEzbT pic.twitter.com/KX6ZUK77iU
深夜の出来事だったのですが、このツイートをきっかけに、1人、また1人、10人、100人、1000人、、、続々とリツイートが繰り返され、ついには1万人を軽く越えるリツイートに発展。
その結果、たった3日間で、僕たちが当時抱えていた大量の在庫よりも、さらに10倍以上のご注文をいただくことになりました。
こんなに少人数で、まだ始めたばかりの僕たちの活動にも関わらず
そして1ヶ月近くもお待ちいただく可能性があるにも関わらず
沢山の方々にご予約いただき、本当に、ありがとうございます!!
僕たちが心から欲しかったHINGEに
こんなにも共感してくれる方がいる、それだけでもう、この活動をはじめてよかった!と感動しています。本当にありがとうございます。
そして
長らくお待たせすることになってしまい申し訳ありません。
さて、そんなHINGEではありますが
ようやく材料の生産が終わり、加工工程に入ることができるようになりました。
せっかくなので、idontknow.tokyoメンバーであるTENT青木が、埼玉県にあるHINGEの加工現場にお邪魔してきました。
ありました、HINGE black。
工場は、ベテランの女性たちがたくさん働いていらっしゃいました。
ほっこりした雰囲気の中、正確な作業が行われていました。
ペンホルダーの穴を打ち抜いていますね。
穴が打ち抜かれました。まだ折りスジはついていないですね。
折りスジはどうやってつけているかというと、
こんな機械がありまして。
ちょっとお邪魔して、折りスジをつける機械の使い方を教わりました。
いっちょやってみましょう。
ガッチョン、ガッチョン、、
次は、ポケット部分を貼り付ける工程です。
ガッチョン!
綺麗にポケットが出来上がりました。
「工場で量産中!」なんて聞くと、つい全自動マシンが勝手に動いて作っているイメージが浮かびがちなんですが、案外、こうやって、人が1つ1つ作っていたりします。
HINGEの場合「匠の技だ」なんてことはもちろん無いわけですが、1つ1つの工程が正確にスピーディにできるように、位置合わせの道具づくりや、作業の順序、配置など、たくさんの知恵や工夫の上に、成り立っているんですね。
今回、そんな知恵を絞ってくれたお二人に登場していただきましょう。
PPなど樹脂製品の加工が得意な株式会社三洋の遠藤さん(写真右)と
今回の協力工場の代表 片岡さん(写真左)です。
なんだか楽しそうですね。
TENT青木 HINGEですが、最初に僕が量産の相談したときは、どう思いましたか?
片岡さん 最初は正直、ここまで売れるとは想像できていなかったですね。
遠藤さん 最初にいただいた図面では、今回の素材に対して無理な設計があって、そのあたり青木さんとかなりやりとりさせていただきましたよね。
TENT青木 たしかに、折りスジを、もっとたくさん入れてましたね。ヒンジ部分を丸いカーブにしたいって言って。でも最終的に、今の山形の折りスジにはすごく満足しています。
遠藤さん 一番ヒヤっとしたのは、箔押しのところですね。この細かい文字を、深く押し込む加工というのがなかなか上手くいかなくて。
片岡さん あそこは本当に苦労しましたね。
TENT青木 この工場では、HINGE以外だと、普段はどんなものを生産されているんですか?
片岡さん 今は文房具のファイルがメインになっています。昔はマグネット部品を作っていたんです。
遠藤さん 僕が新入社員だったころ、17年前くらいですね。その頃に、HINGEの素材であるポリプロピレンシートというものが、まだ今ほど普及しているものではなかったんです。
インクが定着しにくくて、折り曲げにも強いという、当時としては画期的な素材だったんですが、いかんせん当時は加工する工場がなくて。
その頃にマグネット製品を超音波溶着で生産していた片岡さんに「ファイルを作ってみませんか」とお願いしたのが、付き合いの始まりですね。
片岡さん 作っても作っても間に合わない。それくらいポリプロピレンシートのファイルの需要があった時代もありましたね。
遠藤さん ペーパーレスが普及する前、2010年くらいまでかな。すごく需要がありましたね。病院向けだったり、ニッチなところでファイルの需要がまだまだ残っていて。ただ、ある程度コモディティ化したものは、数が安定してきたら国内工場をやめて、海外に製造委託していくものなんです。
片岡さん 結果的に、私たち国内工場は、やることが決まりきった定番品をやるというよりは、新規やイレギュラーの開発案件に関わることが多くなっています。
遠藤さん 海外は決まったものを大量に安く作る。それに対して国内工場は、小回りをきかせて、知恵と工夫で対応する立場ですね。
TENT青木 最近、小さなメーカーとして自分のブランドを作って製造販売したいという人たちが増えているみたいで、僕たちTENTや 、このidontknow.tokyoの活動を見て「自分もやりたいんだけど、どうやって工場に声をかけてるのか」と聞かれることが多いんです。
今のお二人のお話を聞くと、そういった、クリエイターや小さなメーカーの人たちから相談されるというのも、嫌では無い感じですか?
遠藤さん ウェルカムですよ!もう、そんな案件ばかりやっていますから。
今回もHINGEの力でポリプロピレンシートを使ったファイルが復活できて嬉しいなあと思っています。
自分だちだけではどうしても文房具という枠を出ないんです。見つけられなかった可能性を、見出してもらえたんだなあと思います。それがなかったら、ここまで青木さんには付き合えなかったと思いますよ。
片岡さん やはり、加工技術での新しさだけでは乗り越えられないことを、アイデアで乗り越えられることがあって。外部の意見というのがないと、現場からは脱却できないので。
遠藤さん これからも面白いものを思い付いたらお気軽に相談ください!
TENT青木 ありがとうございました!
この記事をお読みの方の中で、もし樹脂のシート材で何かやりたいことがあったら、三洋の遠藤さんに声をかけちゃってください。
そんなわけで。
予約購入の方への生産は、現在、真心を込めつつ急いで進行中です。
(2017年6月現在)
お待たせして申し訳ありませんが、もう少々おまちください。
以上、idontknow.tokyoメンバーを代表して
TENT 青木亮作が、現場からお伝えしました。
第2弾プロジェクト「考えるゲームを考える」に続きます。
(2017年9月追記)
HINGEに2つの新しいサイズが登場しました!
くわしくは、こちらの記事からどうぞ