青木 「第1回CUBOID世界大会(前半)」が終わって、試合の休憩も兼ねて始まったのが、HINGEアイデアワークショップです。
角田 開催前に青木さんがSNS上にこんなことを書いてしまったから、来られなかった方からも結構問い合わせがあったりして。
青木 そうですね、すこし煽ってしまったというか。
角田 来られなかった方にも少しは伝わるように、HINGEアイデアワークショップで何をやったのか、振り返りましょか。
青木 秘訣なんですけどね。言っちゃいますか。はい。
青木 まずそもそもなんですけど。「ブレインストーミング」ってあるじゃないですか。みんなで集まって沢山アイデアを出すぞーってやつ。
角田 あるね。会議室に集まってポストイットに1枚1案で出しまくるみたいなやつね。
青木 そうです、それ。あれって「やった感」は出るんですけど、圧倒的に良いアイデアがそこから生まれたことってあります?僕はあんまり無くて。
治田 TENTではたしかに、ああいった形のブレインストーミングはあんまりやらないですもんね。
青木 それで僕は思うんですけど、アイデアを生み出すために必要なことって、ブレインストーミングなどのアイデア出しの手法を洗練させるよりもむしろ、その事前準備というか、個々の人たちが、どれだけアイデア出せる状態になっているかってことが大事だと思うんですよね。
角田 まあそりゃそうかもね。アイデア出せる人は1人でも出せるわけだし。
青木 僕が今回のワークショップで伝えたかったのは、その「アイデアが出せる個人」になるための方法なんです。やっている人はやっているけど、案外知らない人もいる方法。
治田 ほうほう。
青木 「アイデアが出せる個人」になるために、まずは、長い人生で出来上がってしまった3つの壁を取り払わなければいけないと僕は考えていて。
角田 3つの壁。それらしい話になってきたね。
青木 なってきたでしょ。その3つの壁っていうのは
・頭の中と紙との壁
・文字と絵との壁
・インプットとアウトプットとの壁
これをなくしてスムーズに行き来できれば、日常的にどんなものにも「なんで?」を考えたり「じゃあこうしたらどうだろう?」を考えたりできる状態になれるんです。
角田 僕らが言うところの「アイドントノウな状態」になれると。なるほどそれで、どうやってその壁をなくしていくのかな。
青木 順を追って説明しますね。まず「頭の中と紙との壁」について。 アイデアを出して練り上げて行くには、アホな自分と批評的な自分とを交互に行き来することが大事だと思うんです。
治田 アホな自分というのは、何にも制約されずに自由に出せる状態のことで、批評的な自分というのは、後からそれを冷静に見直す状態ということですね。
青木 はい、でもその2種類の自分を同時に演じるのは、僕の頭脳では無理なんですね。
角田 無理なのか
青木 そこで、まずは頭の中にあることを、良し悪し関係なく全部を紙に出し尽くし、その後、その紙面を批評的な目で見る、という2段階がどうしても必要になるんです。
角田 ほうほう
青木 そこで意外と問題になるのが「良し悪し関係なく」というところです。紙に書くという時点で普通はちょっと躊躇してしまうので、この壁を取り去りたい。
それでどうするのかというと、素振りをします。
治田 素振り。具体的にはどういうことでしょう?
青木 ワークショップでは、まず皆さんに、手元のHINGEに差し込まれた紙の好きな場所に「スマイル」つまり「ニッコリ笑顔」を好きな大きさで描いていただきました。
その後、その同じ紙に文字やら絵やらを自由に追記してもらいました。たとえばこんな感じで。
治田 いわゆる落書きですね。
青木 はい。これは何を意図しているかと言うと、人間って不思議なもので、真っ白な紙を前にするとちょっと躊躇するんですけど、1つでも何か、特に「ゴキゲンな何か」が描いてあると、その後スルスルと自由なものが描きたくなっちゃうんです。
角田 はあ、なるほどね。
治田 準備体操や素振りのような意味での落書きを1枚やるんですね。
青木 とくに一筆目は文字ではなく絵を描いて「何を描いてもいいんだ!」っていうモードに入ることが大事です。 そうすれば、2枚目の白紙を目の前にしても躊躇せず、衝動に任せてスラスラと書ける状態になるわけです。
角田 なるほど、文字から書いちゃだめなの?
青木 ダメっていうことはないと思うんですが、僕の場合、理屈っぽい人間なんで、つい文字から書いちゃうんですよ。
そうすると、その後も文字ばっかり書いちゃって、言葉にならない何かを取り逃がしてしまう。それを避けるために絵から描いてますね。
治田 2つめの文字と絵との壁という話は、この部分ですか ?
青木 そうです、そうです!文字だけでは記述できない何かも、絵や図を使うことで記述できるので、全てをスムーズに出せるようにする素振りは案外大事なんです。
(次のページに続く)